自分達を意識、エネルギーだと知らずに、肉体という形が自分達の姿だと思い込んできた私達は、「母の心」とくれば、お(なか)に子供を宿し、そして、この世に誕生させ、大切に育てていく過程の中で感じる母性とか、母性愛を連想します。

 しかしながら、ここで言う「母の心」は、それとは少し(おもむき)(こと)にします。
 もちろん、「母の心」は、母性、母性愛にも通じていますが、そういうものを遥かに超えた世界というか、そういうものを包括した、もっと、もっと大きな広い世界だと思ってください。

 それは、広さ、温かさ、喜び等々のスケールが全然違いますが、決して特別な世界ではありません。

 確かに、今は、(ほとんど)の人が忘れ去っていますが、誰もが心の奥底に眠らせています。

 それを、私は、「母なる宇宙」という言葉で語らせていただきました。

 私は、母性とか母性愛を大きく包み込む「母の心」は、私達のたった一つのふるさとである「母なる宇宙」という意識の世界、エネルギーと繋がっていることを、本書を通して語らせていただきたいと思っています。そして、どうぞ、あなた自身の心で、このことを証明してくださいということなんです。

 「母なる宇宙」、そうです、「宇宙」です。

 では、「宇宙」とは一体何でしょうか。「宇宙」という言葉から、私達は様々なことを連想します。

 私自身、宇宙と思えば、私はこの地球に、どこかの星からやってきたという思いを、ずっと以前より感じてきました。

 そのことを三次元的にとらえれば、何億光年の彼方(かなた)から、宇宙船に乗ってという、さながらSF映画の中の一シーンを想像されて、未知なる宇宙への思いをかき立てられるかもしれません。
 しかし、私が感じているのは、そのようなものではなく、次元を超えてきたという感覚なのです。
 例えば、今のこの世界は、縦、横、高さの立体感がある三次元の世界ですが、その感覚でとらえる宇宙と、私が感じている宇宙は違っていると思います。
 私が宇宙と言い、宇宙と思っている宇宙とは、太陽系の惑星云々(うんぬん)の形の世界ではなく、波動の世界のことなんです。そうです。宇宙とは、エネルギーです。
 その宇宙というエネルギーは、実は私達自身なんだ、私達は宇宙そのものなんだということを、それぞれの心で感じていただきたいというのが私の思いです。

 そして、「母の心」と宇宙が繋がっていること、つまり、本来の宇宙のエネルギーは、母なる宇宙と繋がっていること、いいえ、一つであることを知っていきましょうということなんです。

 宇宙に興味がある人もたくさんおられると思います。宇宙のパワーが大好きな人も多いのではないでしょうか。しかし、ここでひとつ大きな約束事があります。「母の心」を忘れ去った中で、宇宙に思いを向けていくことは大変危険です。

 まず、「母の心」を感じていくことが一番大切なことだと分かってください。

 確かに、宇宙という波動の世界、エネルギーは、私達にこれから大きな影響を与えていきます。だからこそ、自分達の中に本当の意味での母の温もりを蘇らせることが第一なんです。

 「宇宙は遠くにあるものではありません。宇宙は自分達の心の中にあるのです。」

 ということを心に留とどめて、ありふれた日常から、宇宙を感じていってほしい、宇宙を思うことをしていってほしいと思っています。

 宇宙を感じること、宇宙を思うことは、母の思いを感じること、母を思っていくことなんだと知っていただきたいと思います。
 ここで、宇宙というところから、今一度、私達の日常生活に視線を向けてみます。私は、日々、目にするニュース、耳にするニュースを通して、次のようなことを感じています。あなたはどうでしょうか。
 人は、みんな心の中に暗闇を(かか)えています。日々、目にしたり、耳にしたりするニュースは、そのことを示しています。身震いするような、目を覆い(おおい)、耳を疑う事件が、次から次へと出現してきます。
 色々な事が起こる中で、許せない、何でここまでするのか、怒りの矛先(ほこさき)をどこへ向ければいいのか、その責任はどこにあるのかと、問題解決を叫ぶ人達も、実はそれが自分達の心の世界のことなのだということには、全く思いも及びません。

 しかし、それが現実なのです。誰がではなく、また特定の特殊な人種がというものでもないと、私は思っています。

 大切なもの、自分の原点を忘れ去った人間の心の中から出てくる闇の世界が、ある時には、弱い者いじめになったり、児童虐待になったり、その他、営利誘拐、児童買春、親殺し、子殺し、保険金殺人、おれおれ詐欺、霊感商法、詐欺商法、収賄贈賄、談合汚職、臓器売買、援助交際、集団暴行、麻薬密売に麻薬中毒等々、諸々の事件となって、毎日毎日、世間を騒がせています。

 日々の生活の中では、熾烈(しれつ)な受験戦争や経済戦争が続いています。実際に武器弾薬が飛び交い、多くの人命が犠牲になっています。核の脅威(きょうい)にさらされている現実があります。最近では、ネット社会におけるサイバー攻撃等々があり、本当に、一つの家庭から世界中に至るまで、今や戦いのエネルギーが蔓延(まんえん)していることを感じます。

 それを、人類は発展、進歩、繁栄と位置づけるのでしょうか。

 戦争のない平和で明るい社会を作り上げていくために、人類は戦争を起こしていきます。あなたは、この矛盾をどのように思われますか。

 世の中は、今、水面下で激しく動いています。その水面下の動きが、ポッ、ポッと頭を出していることが、様々な自然現象や人的現象に現れているのです。

 もうすでに、その動きは始まり、いよいよ、これからだという時期に差し掛かっていると思います。これから、さらに世の中は混沌(こんとん)としていきます。事態は、もう、そういう局面を迎えています。

 だからこそ、それぞれが心の奥底に眠っている「母の心」に触れていかなければならないんです。またこれから、そういう方向に流れていくだろうと、私は感じています。
 次の項目で、このような世の中の流れを踏まえた上で、いくつかのテーマについて、あなた自身がどのように感じ、また思っているかを、自分に問いかけてみてください。

テーマ:「生まれてくることとは」に続く

(塩川香世著『母なる宇宙とともに』より抜粋)